他人名義(配偶者や両親など)の口座を使ってトレードを していませんか?

こんにちは。堀 龍市 税理士事務所の栗下です。

みなさんの中で、他人名義(配偶者や両親など)の口座を使ってトレードを
しているといった方はおられますか?

実は、弊所でいただくお問い合わせでは「他人名義の口座を使ってトレードを
しているのですが…」といったご相談をいただくことが、意外と多いです。

理由は、トレードでの収入を勤め先にバレないようにするためや、取引数に
制限がある口座でより多くのトレードをするためなど様々です。

そもそも、他人名義の口座を使ってトレードをすることは、口座開設時の約款に
抵触している可能性が出てくることが考えられますが、それ以外に税金面での
リスクもはらんでいます。

深く考えずに安易な気持ちで他人名義の口座を利用していると、後で税務署から
指摘をされたり、ペナルティーの税金を課せられる可能性もありますので、
今回は、他人名義の口座を利用することの税務上の危険性について考えて
みたいと思います。

まず大前提として、税法には名義よりもその収入は実際は誰のものなのか
ということが、原則的に重視されます。

これを「実質所得者課税の原則」と言い、所得税法、法人税法のそれぞれで
次のように規定されています。

第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が
単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を
享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、
この法律の規定を適用する。
(所得税法第12条より)

第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が
単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を
享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、
この法律の規定を適用する。
(法人税法第11条より)

具体的に説明すると、例えばサラリーマンの方が妻名義の証券口座を利用して
トレードを行っていた場合、実際にトレードをしているのは本人で、妻の名義は
形式上利用しているだけだとすると、税法の原則から言えば、そのトレードの
収入は、名義人である妻ではなく、すべて実質的にトレードをしているサラリーマン
ご本人のものであると言えるということになります。

では、これを踏まえた上で実際にどういったリスクが想定されるか、
考えてみたいと思います。

まず、本人(サラリーマン)が妻名義の証券口座を利用してトレードを行い、
確定申告も妻の名前でしっかりと申告し、税金もきちんと納めていたとしましょう。

このようなケースでは、どのようなリスクが考えられるでしょうか…
海外業者を利用したFXを例に考えてみたいと思います。

海外業者を利用したFXでの所得は総合課税と言って、他の所得と合算した上で
その所得金額に応じて税率が決まります。

本人には、サラリーマンとしての給与収入が年に数百万円あり、一方で妻は
専業主婦で収入がないといった場合、本人の名前で申告をするよりも、
妻の名前で申告をすることによって、税金の負担が減っているというケースは
十分に想定できます。

この場合、税法の原則より、本来、トレードでの所得は本人の所得であると
言えるため、税務調査が行われれば、当然妻の名前で申告していた利益は、
全て本人の利益として申告し直し、追加で税金を納めることになり、
更にはペナルティの税金まで課されてしまうこととなります。

では、国内業者を利用したFXなら、誰の名前で申告したとしても一律20%の
分離課税なので問題ないのでは?と思った方もおられるのではないでしょうか。

実は、この問題が回避できたとしても、さらなるリスクが想定されるケースが
あるのです。

それはどういったケースなのか…次回は別の問題点について考えてみたいと思います。

 

 

 

ソフィア・アセットマネジメントクラブ(スタンダード)

栗下尚紀の投資家税務より

 

ソフィア・アセットマネジメントクラブ(スタンダード)の詳細はこちらから▼

ソフィア・アセットマネジメントクラブ スタンダード